武器がないと農業生産者はメーカーには一生勝てないと思う

こんにちは。

ブログを久しぶりに書くので、投稿するのを諦める前にさくっと書いてさくっと投稿したいと思います。

8月後半の10日間、インドネシアのスラウェシ島に行って来ました。前回は3月に1人で行ったのですが、今回はチョコレート仲間と農業仲間を引き連れての訪問です。


スラウェシ島のマカッサルから入り、西側のPinrang(ピンラン)、Enrekang(エンレカン)、Bantaeng(バンタエン)、Luwuk(ルウック)
の4地域に行きました。(写真はEnrekangにて)

前回はToraja(トラジャ)、Palopo(パロポ)、Pinrang(ピンラン)の3地域に行きましたので、これまでにスラウェシ島内で6つの地域を渡り歩いたことになります。

これだけ歩き回ればかなり本質的に状況が見えて来ました。
大きく2つに分けてまとめます。

その1.農家が低品質、低価格のカカオ豆をつくるのは大手メーカーによる意図的な仕組みによるものか?



カカオ農家にとって、カカオ豆を販売できるルートは仲買人だけ。
そして、仲買人の先には安く買い叩く欧米の大手チョコメーカーがいる。
チョコレートメーカーは品質の高いカカオ豆をインドネシアから仕入れるつもりは毛頭ないので、品質を高められても逆に困る状況だという。そのため、農家は品質にこだわって作る意味がない。

インドネシアスラウェシ島にはバリーカレボーとマーズがカカオの調達のために
現地に入っており、彼らは、チョコレートにブレンドするためのカカオのうち低品質なものをインドネシアで調達しようとしています。とにかく低品質でも量がとれれば良いという考え方だ。そのため収量の高い品種を開発して、農家に対して苗木を提供しているといいます。

そのため、農家はわざわざカカオ豆を発酵させて素晴らしいフレーバーのチョコレート原料をつくるインセンティブがありません。(写真は発酵させずに乾燥させていているカカオ豆です)




この結果、インドネシアではいつまで経ってもカカオ豆の品質向上が見込めません。


その2.カカオ豆の買取価格が非常に低下しているため、多くの農家がカカオ豆の栽培をやめ始めている




カカオ豆の相場が2016年には3000ドル/トン程度だったものが、2017年には2000ドル/トン未満に下がりました。そのため、農家は収入が見込めないカカオ豆の栽培をストップし、ココナッツやとうもろこし、お米の栽培に移行しています。もちろん、価格が下がっただけでなく、樹齢が20年を超えていたり、病害や虫害による生産量の減少も農家の収入にダメージを与えました。それら病虫害に対して、農薬を大量に使ってしまい、土壌が汚染されてカカオの収量がさらに下がってしまうという悪循環になってしまった農家もいます。

いずれにしても、2017年時点でカカオ栽培は農家にとって魅力的ではなくなりました。

もちろん、相場というものは上がったり下がったりを繰り返すので
相場が上がった際にはまた栽培する農家が増えるでしょう。

しかし、この二つの事実をもとに考えると明らかに
農家は大手メーカーと市場によって生かさず殺さずという状況に陥っています。

ぼくは純粋に農家を助けたい!とか、大手メーカーは仕組みを変えるべきだ!とか言いたいわけではないですが、誰かが一方的に弱い立場にあるのって悔しいです。

今の状況を一転できるような、大手企業で甘い汁を吸っているような人に対し
交渉力を持てるような武器を農家に与えて、時代の変化をつくる。

そんな事業をやりたいと強く心に思ったのです。

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