カカオの風味は「発酵」で決まる|産地の個性をつくる工程と、原料選びの視点
「エクアドル産はフローラル」「マダガスカル産は酸味が特徴」。チョコレートの世界では、産地の国名で風味が語られることがよくあります。
もちろん、土壌や気候、品種によって傾向はあります。けれど、カカオの風味をつくっているのは国だけではありません。実は、収穫されたあとの「発酵」が、香りを大きく左右しています。
私は2017年からインドネシア・スラウェシ島エンレカン県の農家さんと一緒に、カカオの品質づくりに取り組んできました。この記事では、その経験も踏まえながら、発酵がカカオの風味にどう影響するのかを紹介します。
カカオ豆ができるまで
カカオは、カカオの木になる「カカオポッド」という実の中にある種子です。収穫したポッドを割ると、白い果肉(パルプ)に包まれた豆が出てきます。
この豆を果肉ごと箱や葉っぱで覆って数日間置き、発酵させます。その後、天日などで乾燥させたものが、私たちが「カカオ豆」と呼んでいるものです。
発酵で何が起きているのか
発酵の間、果肉の糖分を微生物が分解し、熱や酸が生まれます。その変化が豆の内部にまで及ぶことで、チョコレートらしい香りのもとがつくられます。
発酵が足りないと、渋みや苦味が強く、香りの乏しい豆になります。逆に、発酵を適切に管理すると、果実のような香り、ワインのような香りなど、豊かな風味が生まれます。発酵がうまくいかないと、お酢のような酸っぱい匂いや、納豆のような匂いが出てしまうこともあります。
エンレカンで取り組みを始めたころ、同じ農園の、同じ品種の豆でも、発酵の仕方ひとつで香りがまったく別物になることに驚きました。風味の違いは、国や農園だけでなく、発酵のバッチごとにも生まれるのです。
発酵されないカカオが多い理由
これほど風味に影響する工程であるにもかかわらず、世界には発酵をしないまま乾燥・出荷されるカカオも少なくありません。
その背景には、取引の仕組みがあります。農家さんが豆を売る相手が仲買人に限られ、品質ではなく重さで買い取られる場合、手間をかけて発酵させても、収入が増えにくいのです。2017年に初めてスラウェシ島の各地を回ったとき、私はまさにその現実を目の当たりにしました。
だからこそ、品質に見合った価格で直接取引する仕組み(ダイレクトトレード)が、良いカカオを育てるうえで欠かせないと考えています。
原料を選ぶときに見てほしいこと
チョコレートの原料を選ぶとき、国名だけで判断していませんか。より個性のある原料を探しているなら、次の点も確認してみてください。
- 産地をどこまで特定できるか:国だけでなく、地域や農園まで分かるか
- 発酵の管理:発酵や乾燥の工程に、誰がどのように関わっているか
- 生産者との関係:継続的に取引していて、品質のばらつきに対応できるか
原料の背景が分かると、商品に物語が生まれ、お客様にその価値を伝えやすくなります。
発酵からこだわったカカオを使いたい方へ
WHOSE CACAOでは、エンレカン県をはじめとするインドネシアの農家さんと直接取引し、発酵の段階から品質づくりに関わったスペシャルティカカオを、カカオマスやカカオニブなどの原料として卸売しています。
このサイトは、カカオ豆からチョコレートをつくるWHOSE CACAO(フーズカカオ株式会社)代表の福村が運営しています。記事内でWHOSE CACAOのサービスを紹介することがあります。
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